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藤井フミヤ「十音楽団」in 市川文化会館

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コロナ禍以前からテレワーク主体の引きこもりがちな私が、先日久しぶりにコンサート会場へ足を運んだ。この日は仕事抜きで(このライブツアーは昨年神戸でwowow生中継/収録/ミックスダウン済みで、私の仕事は完了している)保護者引率として参加した。これまであまり音楽に興味を示さなかった我が娘が、どういうわけか「フミヤさんのコンサートに行ってみたい」といいだしたから。

娘は西暦2000年の生まれ。前年の大晦日は初めてのカウントダウンライブがあり、2000年の夜明けを私は日本武道館で迎えた。正確には武道館の外、底冷えのする録音車の中で。その時、娘はまだ暖かな液体の中、真っ暗な小さな世界にいた。

嫌なニュースばかりの昨今。世紀末だった当時も災害や悲惨な事件はいろいろあったが、今ほど世相は暗くなかった(気がする)。バブル崩壊のダメージは残りつつも、未来はそこそこ明るいだろうというボンヤリとした希望があった(ような気がする)。愚かな私は「高い緊張感を持って状況を注視」することなく、激動の21世紀へ足を踏み入れていく。

22年前。NYのツインタワーは揺るぎなく聳え立っていた。安心安全な原子力発電所は「5つの壁」で守られていた。地震に対する漠とした不安はあるにはあったが、津波があんな破壊力を持つ黒い水の塊だなんて知らなかった。新型ウィルスが蔓延して世界が静止するなんて思いもしなかった。

そして今。世の中は随分変わってしまったけれど、国家民族間の紛争は相も変わらず絶えることがない。ウクライナ問題だけでなく、中東をはじめ世界中どこにでも火種が燻っている。私は「非人道的兵器」という言葉が嫌いだ。破壊殺傷目的の兵器に人道非人道の区別があるなんて理解できない。人道的兵器で殺されたら安らかに死ねるとでもいうつもりか。人の愛がもとに戻り、夢が未来に変わる瞬間をただ待ちわびる。

それにしても、市川のステージは素晴らしい出来映えだった。wowow生中継が今日だったらよかったのにと、つい思ってしまった(神戸の時が悪かったといっているのではない)。終演後、楽屋にフミヤさんを訪ねて娘を紹介し、少し話をさせていただいた。初めてスターと対面し、興奮冷めやらぬ娘は「フミヤさん、顔ちっさ!身体ほっそ!」と、帰りの車中で騒いでいた。

注)文中で「BIRTH」「P.S.マリア」の歌詞をいくつか引用しています。

SUN POIKO新曲「EF ~Eternal Fairy~」

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SUN POIKOの新曲PVがYouTubeで公開されている。

SUN POIKOとは犬を接点に知り合った3人のご婦人が、愛する犬への思い、その暮らしのひとコマを唄にする音楽ユニットである。お姉さま方とは10年くらい前に知り合い、これまで2枚リリースされているCDの制作をお手伝いしてきた。今回もミックスダウンで参加させてもらっている。

この曲のメインボーカル、一度聴くと癖になる声質の持ち主rinmanさんは現在漫画家でもあり、犬漫画デビュー作「ゴールデンレトリバーのエフとコメとの楽しい暮らし」が好評だ。その漫画の中で、エフの旅立ちを見守る彼女のもとに、友人の作った唄が届く場面がある。その曲を増本くんが素敵なアレンジでまとめ上げ完成したのが今回の作品。(その友人はSUN POIKOメンバーgoomamaさんkurakuraさんのこと)

ここで唄われているのは普段の生活、ありふれた日常である。日常というものは代わり映えのない毎日の繰り返しで、ややもすれば退屈に見えることも少なくないけれど、ふと振り返った時、そんな日々の隙間で揺らめく小さな幸せの花を見つけることもある。東日本大震災・原発事故から10年、そして昨年から続くコロナ禍。変わりゆく日常の中であっても、ささやかな幸福の種は蒔かれているはずだと信じ、悲観せず今日一日を生きてゆかねばと思う。

朝、猫に催促され起き出しエサをやる。昼、猫に促され外に出て、麻紐で作ったオモチャで猫が飽きるまで遊び、猫が疲れて寝た隙に仕事をする。夜、舐められ噛まれ引っ掻かれたりしながら、猫を抱えて眠りにつく。これが私の望む、ささやかな毎日の暮らしである(犬じゃなくてすみません)。

藤井フミヤ SYMPHONIC CONCERT 2020 生配信(9/10)

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昨日(9/9)、東京芸術劇場へ行った。シンフォニックコンサートが始まった2014年以来、何度かこのステージを観た中で、昨夜はベストだったと断言できる。ルチアーノ藤井は圧倒的な声量で隙間の空いた客席を埋め、それに負けじとオーケストラも決して攻撃的でなく、唄を優しく包むように押し出すようにうねる。普段コンサートを鑑賞しても、あれこれチェックしながら仕事耳で聴く癖のある私が、昨夜はほとんど一観客として楽しんでいた。唄う喜び、演奏できる感謝の気持ち、それをまた聴ける幸せで会場中が満たされていた。音楽の必要性、ライブの素晴らしさを皆が再確認し、こんな幸福度の増したステージがそこかしこで開かれるようになれば、コロナ自粛期間も悪いことばかりではなかったと、少しの慰めになる。人はどんなことからでも学べるものだ。

3月に中断してから半年。延期の振替公演をキャンセルし、観客を半減して新たに組まれたスケジュール。最終日の今日(9/10)は、会場へ足を運べなかったファンのために生配信(18:30スタート)が行われる。その時間は空いているのだけれど、さまざまな都合で会場へ行くのは難しかった、一度は諦めていたけれど、でもなんだか心がザワつく、といった人はチケット(税込4000円)の購入を検討してみてはどうでしょうか。

尚ちゃんの生誕祭。

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先日12月27日は藤井尚之さん50回目の誕生日。そのお祝いライブがきらびやかなゲストを迎え、豊洲PITで行われた。以下、ゲスト出演者とセットリストを記しておく。

[Naoyuki Fujii Welcome 50’s Party]
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M1 嗚呼、我が人生
M2 キスの嵐
M3 クロームメタリック
〜鈴木雅之さん、ワンダラーズ、アブラーズ登場〜
M4 め組のひと
M5 ランナウェイ
〜鈴木雅之さん、アブラーズ退場。トラベラーズ登場〜
M6 Charlie Brown
M7 Yakety Yak
〜ワンダラーズ退場。河口恭吾さん登場〜
M8 テネシーワルツ
M9 I’ve Got You Under My Sin〜君に首ったけ
〜河口恭吾さん退場〜
M10 切れた首飾り
〜YOUさん登場〜
M11 Blue Velvet
〜全員退場。舞台転換のため小休止〜
〜Non Chords登場〜
M12 BARINBASS
M13 Space cake
M14 Naturally
〜Non Chords退場。夏木マリさん登場〜
M15 スワサントンブルース
M16 Player
〜夏木マリさん退場。アブラーズ再登場〜
M17 Final Lap
〜藤井フミヤさん登場〜
M18 ONE NIGHT GIGOLO
M19 I Love You, SAYONARA
M20 NANA
〜アンコール〜
EC1 N.
EC2 BLUE SKY
EC3 蜂蜜の蜘蛛の巣
EC4 君が好きだよ
EC5 聖者の行進
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どのコーナーも密度が濃く楽しいステージであった。そしてクライマックスはやはり本編最後、フミヤさんが登場したところであろう。アブラーズ+藤井フミヤ、元チェッカーズの4人が同じ舞台に立ち並ぶ姿は、そうそうお目にかかれるものではない。勝手ながら私はこの4人を「チェッカーズ SUPER 4(長いので以下CS4と略す)」と呼ぶことにした(某アイドルグループの真似をしたわけではない)。

CS4が今回演った3曲は、フミヤさんのライブでもよく歌われる曲だ。その時どきで調子の良し悪しはあれど、歌い回しやニュアンスは安定していて、ステージによっての違いは殆どない。しかし、この日は違っていた(と私は感じた)。

終演後、大勢でごった返す楽屋でフミヤさんに近づき、そのことを伝えてみると驚いた様子で「あ、そう?何が違った?」と聞き返された。ぼんやりとした感覚だけで何も準備していなかった私は、返答に窮しながらも思いつくまま言葉を並べたが、上手くは伝えられなかったように思う。どの言葉も口元から出た瞬間に何か違うな、と感じながら話していた。

いまもその違いを説明しようとしているが、やはり言葉にするのは難しい。簡単に言えば歌っていたのが「藤井フミヤ」ではなく「藤井郁弥」だったということか。フミヤさんの表情、目の輝きもちょっと違っていた気もする。もしまたCS4がステージに立つ日が来たら、その時、いい言葉が見つかるのかもしれない。

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今回のライブ、これだけの強力なゲストに囲まれ「尚ちゃん大丈夫か?」なんて余計な心配していたが杞憂だった(1曲目で歌詞が飛んだり、途中曲順を間違えたりしたのはご愛嬌)。何より歌がとてもいい。声の質感もよく説得力があり聴き手に歌詞が届くのだ。サックス奏者としてだけでなく、歌手としても円熟味を増してきたと思われる。

五十にして天命を知る。2015年の尚ちゃんは我々にどんな姿を見せてくれるのだろうか。個人的には久しぶりに歌手「藤井尚之」が詰まったアルバムの発表を希望している。

増本直樹、うたう。

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アシタノタイヨウ – EP – 増本直樹

増本直樹くんの新作がiTunesAmazonで公開されている(ダウンロード販売)。適度にいるコアなファンはすでに手に入れ、日々彼の囁きを耳元で楽しんでいることだろう。そう、今回のまっすんは唄っているのだ。

増本直樹の名は藤井フミヤさんの大ヒット曲「Another Orion」の作曲者として世に知られた。曲提供から始まった彼のキャリアも現在はそれにとどまらず、アレンジ、プログラミング、プロデュース、プレーヤーと、その活動範囲は広い。手がけたアーティスト、楽曲をいちいち挙げていてはキリがないので、詳しくはオフィシャルサイトを見ていただきたい。

さて、多才な増本くんが満を持してリリースした渾身作「アシタノタイヨウ」(「アタシノタイヨウ」ではないので間違えないように。カタカナに弱い私は2秒くらい迷った)。今作で彼は作詞作曲編曲はもちろんのこと、楽器演奏からレコーディング、ミックスダウンまで、すべてひとりでこなしている。

全5曲のパッケージでM1~4は唄もの。M5のみインストゥルメンタル(ドビュッシーばりのピアノ曲)である。

M1_アシタノタイヨウ
M2_Melody
M3_bow wow lovin’ you
M4_快晴の秋空に僕らの青春は突き抜ける
M5_your kiss

どれも試聴できるので聴いてもらえたら話は早い。未聴の方は、まずここで試聴するべし。

〜♫♫♫〜

まっすんはやさしい。
大事な人がもし側にいるなら ちょっとぐらい我慢して笑ってあげなよ〜(M4より)」と、やわらかな唄声に乗せ語りかけてくる。やさしく諭すように。
君が好きと言えなかった〜(M1より)」こともあるだろう。
大好きなんだベイビー〜(M3より)」と言っちゃったことがあるかもしれない。
決して背伸びをしないその姿勢に、ノスタルジーとでも言おうか、どこかホッとする暖かさを感じたのは私だけではあるまい。

1曲200円。5曲まとめてのパッケージ売りは900円(少しお得)だ。

スーパーやコンビニでつい手に取るそのプリン、そのシュークリームを今日一日は我慢して、浮いたお金で買ってみる、というのはどうだろうか。まっすんの唄声を聴きながら過ごす夕べ。甘い気分で少しだけ胸が膨らみ(物理的な大きさでなく)、少しだけお腹がヘコむ(こっちは物理的に)かもしれない。