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藤井尚之「Dark & Light」(1)

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東京の桜が満開となった快晴のよき日(3/27)、藤井尚之New Album「Dark & Light」が発売された。前作「foot of the Tower」と同じくテナーサックスによるインストゥルメンタルで、オリジナル7曲、カバー4曲の全11曲が収められている。35年に及ぶキャリアで初となる全曲尚ちゃんアレンジ/プロデュース。これまで周りの大人たちの思惑を幅広く受け入れてきた間口の広い尚ちゃんの、中心にある「素」の部分がギッシリと詰まった、記念碑的作品に仕上がったと私は思っている。

M1から順番に簡単な曲紹介ふうの、なんの参考にもならない一口メモを記していく(途中で挫折する可能性あり)。

M1「5th St.
1月22日から始まったレコーディングで最初に録音された曲。バンドメンバーはドラム平里修一、ベース中村昌史、ギター古澤衛、キーボード工藤拓人の4人。このメンバーでオケを一発で録り、その後サックスをダビング。アルバムを通し基本的にこのスタイルでレコーディングは進められている。M1とM2のダイジェスト版Music Videoがここで視聴可能。DVD付き商品をお買い求めいただくと、このフルサイズ版が手に入る。通常盤より500円くらい高いので少し迷うかもしれないが、ファンの皆様は賢明なご判断をなさることだろう。この曲のMusic Videoはあのソラミミスト・安齋肇さんの手によるもの。

M2「Amazing Grace
カバー曲その1。ドラムは打ち込みで修一くんはおやすみ。全11曲中、3曲打ち込みものがあり、すべて屋敷豪太さんがプログラミングしている。当初、打ち込みドラムに拓人くんのピアノだけをダビングして、プリプロ音源の尚ベースと尚ギターをそのまま採用するつもりでいたが、尚プロデューサーの強い希望で差し替えに。元の尚演奏もとても好きだったのだけれど、やはりプロのミュージシャンはプロなのだなあと納得したのだった。間奏のサックスソロがなんか変、と思った方、あれは別パートのサックスを逆回転にして無理やりはめ込んだので変なフレーズになっているのです。尚ちゃんが上手く吹けなかったわけではないので、気にせず通り過ぎてください。

M3「kakera
2月半ば、アルバム制作も最終段階へと進み、私は自宅でマスタリング作業をしていた。その日は日中でも気温が5度前後までしか上がらず、石油ストーブを灯していても指先がかじかんでくる寒さだった。普段作業場には飼い猫を入れないようにしているが、ニャーオニャーオと啼きながらノックする磨りガラスに映る猫のシルエットが不憫で、特別に禁を破った。猫は入るなり私の膝に飛び乗り、身体を丸めすぐ眠りに落ちた。完成しつつあるアルバムをBGMに、まるで「ねことじいちゃん」のような平穏な午後のひととき。しかしそんな蜜月もこの曲の間奏で終わりを迎える。キュインキュインという古澤くんのギターソロが始まると猫は急に首をもたげ、左右を確認するよう首を振り、パッと膝から飛び降りた。尻尾を膨らませガラス戸の前に駈け寄って振り向き「ここなんかヤバいのいる。はやくトビラあけてくれ」とでも言いたそうな目をして私に訴えかけてきた。開けてやると猫は一目散にどこかへ走り去り、その日はもう二度と作業場へ近づくことはなかった。

この曲にはもうひとつ、ちょっとしたエピソードがある。でも長くなったのでそれは次回に。