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藤井フミヤ 世界遺産を巡る1「嚴島神社」

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5月27,28日、広島県廿日市市宮島にある嚴島神社で「世界文化遺産登録20周年記念事業 藤井フミヤ 奉納コンサート」が開催された。写真は前日26日に行われたリハーサル風景。ステージは10坪ほどの広さの高舞台、本番当日はその下の平舞台にイスが並べられ客席となる。高舞台平舞台ともに国宝だ。

セットリスト
M1  鎮守の里
M2  BIRTH
M3  TRUE LOVE
~Talk~
M4  BOY’S HEART
M5  君が僕を想う夜
M6  大切な人へ
~Talk~
M7  ふるさと(新曲)
M8  青春の道
M9  青春
~Talk~
M10  Another Orion
M11  夜明けのブレス
~Talk~
M12  翼をください
M13  Blue Moon Stone
M14  夜明けの街
~Talk~
M15  命の名前(新曲)
~勝手にアンコール~
EC1  MY PLANETS

バンドメンバー
percussion藤井珠緒、bass竹下欣伸、guitar田口慎二、piano岸田勇気、violin伊藤彩

普段のコンサート収録では、専用車の中で人目を忍び録音していることが多い。しかしここは神の島。大きな車で乗り入れるのは不遜であるし、物理的にも難しい。そこで今回は高舞台からみて右奥にある右楽房(ここも国宝だ)という場所に機材を持ち込んだ。ステージも客席もよく見渡せる場所である。我々録音だけでなく、PAや照明、映像チームもすべてここに固まっていた。

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一般の参拝は18時まで、30分でイスを並べ18時半に開場。開演までの間、私は続々と入場してくるファンのみなさまを右楽坊の中から見るともなく見ていた(写真はその右楽坊から撮った2日目開演直前の様子。プライバシー対策処理済)。みな一様に明るく晴れやかな顔をしている。ここに詰めかけた元乙女たち(今も乙女なのかもしれないが、その判断は個々に委ねる)の多くは30年来のファンなのだろうな、なんてぼんやりと考えていた。

19時開演。神社コンサート恒例、会場にいる一同での二礼二拍手一礼から始まり、式年遷宮イメージソングでコンサートの幕が開いた。場所が場所だけにみな座ったまま、1曲1曲静かに進んでいく。

3ブロック目、新曲「ふるさと」から続く3曲にはノスタルジーを刺激された。山と海の狭間で夜空の下にいるという環境も影響したのだろう。意識は子供時代にタイムスリップしていた。ヘッドフォンの中ではフミヤさんの唄声がして、顔を上げればすぐそこにステージでの姿も見える。しかし目に浮かぶのは、幼馴染みの顔、虫採りに行った林、今はない校庭の危険な遊具、夏の青い空、真っ暗な夜道、、、。映像だけでなく、音や匂いまで感じたような気がしていた。

拍手の音で我に返った。少し冷たい海からの風が、昂る気持ちを鎮めるかのように吹き抜けていく。私は以前読んだ谷口ジロー著「父の暦」の一節を、実感を伴って思い出していた。勝手ながら引用させてもらう。

〜私は思う……郷里に帰る……のではない、いつの日か郷里がそれぞれの心の中に帰って来るのだ〜

会場にいた同世代であろう元乙女たちと、この気持ちを分かち合えたはずと元少年の私は信じている。