月別アーカイブ: 2013年2月

藤井フミヤ 2012ライブ WOWOWで2月24日21時から放映

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今度の日曜日、東京マラソンが開催される2月24日夜に、フミヤさんのライブがWOWOWで放映される。

これは昨年12月に行われたツアー「Fumiya Fujii Special Live 2012 Winter String」、その最終日(12月30日)の公演を収録したもの。会場は東京国際フォーラム、ホールA。

そのタイトルが示す通り、ストリングス(弦カルテット)が全編に渡り登場する。弦との共演は久しぶりで、いつもとはちょっと違う色のライブに仕上がった(と録音担当の私は思う)。

あれは中2の冬、朝起き出すのが辛くなるころだったか。登校前の時計代わりとして観ていた「志賀ちゃんのおはスタ」で出会った、ブレイク前夜のチェッカーズ。「ギザギザハートの子守唄」か「涙のリクエスト」か、どっちだったか記憶は曖昧だが、前髪を垂らした若き日のフミヤさんがテレビの中で唄っていた。

それから30年。節目になる今年は、折りにふれフミヤさんネタを書いていきたいと思っている。沈黙しがちな私のことなので、あまり期待はできないが、、、。


Winter String(初回生産限定盤)(DVD付)

風に乗って伝えたい〜彦根レコーディングレポート(後篇)

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あの、本番料金になってしまいますがよろしいですか?」先日案内してくれたあの職員さんの発したひと言が、我々の動きを止めた。

どうやら私は思い違いをしていた、、、というより思いもよらなかった、と言ったほうが正しいか。

ホールのレンタル時間は9時から17時まで。9時に入って17時には完全に撤収する。それを守りさえすればこの8時間をどう使おうが、それはこちら側の勝手だと思っていた。しかしリハーサルと本番では料金設定が違うのだという(もちろん本番のほうが高い)。

用意したタイムテーブルは9時から13時「セッティング(調律含む)&リハーサル」、13時から17時「本番」と、おおまかにそう区切っていた。当然ホール側にも伝えており、それに基づいて予算が組まれていた。

いまは正午、12時。本番予定時刻より1時間早い。「いま本番を始めてもいいですけど追加料金がかかってしまいますよ」ということを、職員さんは親切にも忠告してくださったのだ。

お客さんを入れて使うならば、その差額も納得できる。しかし今回の使い方はリハーサルも本番も見た目は一緒。べつに1時間くらい大目にみてくれても、、、なんて気持ちにもなるが、、、ダメなものはダメ。

都内の使い慣れたスタジオでならいざしらず、彦根で余所者が駄々をこねるわけにはいかない。そう、我々は意外とモノワカリのよいオトナたちなのだ。「郷に入っては郷に従え」というコトバを知っている。

仕方がないのでお弁当を食べることにした。冒頭の写真がそれだ。夏原さんご用意のゴージャスお弁当。味もさることながら、その器の大きさに圧倒される。その後の作業に支障をきたすのではないかというほど満腹になった。

食休みをして13時キッカリに本番開始。4テイク録って2テイク目がOKとなる。M-2は正味1時間ほどで録り終えた。お弁当のおかげか、順調だ。

小休止して次はM-3。歌とピアノ伴奏の「声楽家バージョン」。

ピアノはスタインウェイD274 。ベーゼンドルファー275も使用可能とのことだったがこちらを選んだ。この2台が常備されているとは素晴らしい(コンディションも完璧だった)。

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マイクは歌にノイマンU87。ピアノはオンマイクにノイマンKM84、ちょっとオフ目にサンケンCU41をそれぞれステレオペアで立てた。オフマイクは先程と同じだ。

中原さん(歌)の喉の調子があまり良くないそうで、いつまで持つか、といった感じ。それでも慎重に休み休み、部分録りしたりして何とか頑張っていただき、多少ツギハギにはなったが良いテイクを録ることができた。結果はCDを聴いてもらえればわかる。

16時過ぎにはすべて録り終え、時間を余し撤収も完了した。

 

今回の遠征では思いがけない人との再会があった。その彼なくしては、ここまでスムーズな録音はできなかったであろう。

名は山本篤士という。

彼は今は無き(涙)一口坂スタジオ(私もここの出身だ)で働いていたことがあり、そのとき何度か一緒に仕事をした。再会するまで知らなかったのだが、彼は滋賀県出身で、もろもろの事情から数年前東京に見切りをつけ、地元に戻り関西圏で仕事をしているそうだ。

彼がいて何がよかったか。もちろん機材の提供(ProTools、マイク、ヘッドアンプなど)に助けられたことは言うまでもない。

だがこのご時世、機材などそこらの小金持ちなら結構立派なものをお持ちである。しかしプロフェッショナルなレベルでそれを使いこなせる人はなかなかいない。それはその人たちが劣っているとかそういう話ではなく、すべては経験の有無による。ミスの許されないシビアな現場を踏んでいるか否かの差なのだ。経験に優る教科書はどこにもないのである。

そしてそういう場にいた者との間には、ある種の共通言語が存在し、話が早い。そうでない人には百万言を費やしても、肝心なことがなかなか通じない。そこで余分なエネルギーを使うことになるわけだ。

山本くんには僅かな言葉でこちらの意図が余すことなく伝わる。東京から滋賀に移り住んでいても、一度覚えた言葉を忘れるような愚か者ではなかった。彼が滋賀にいてくれたことは本当に幸運であり、感謝もしている。

まあそんなわけで今回の彦根遠征は大成功だったと言えるだろう。不足だらけのレポートはこれで終わる。


あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫)

レコーディング現場に限らず、同じ日本語を使っていても話が通じない場面は案外多い。話が通じる人材というのは貴重だ。カイシャの人事権を握っているエライ人、リストラするときはそれに注意してやるといい。大きなお世話だが。

 

風に乗って伝えたい〜彦根レコーディングレポート(前篇)

ようやく気が向いてきたので、忘れないうちにレポートを書いておく。

前回紹介したCD「風に乗って伝えたい」M-2,M-3制作のため、昨年11月28,29日に滋賀県彦根市を訪れた。わざわざ彦根まで遠征して録音することには意味がありワケがあるのだが、面倒なのでそれは割愛する。ともかく、ホールを借り一発録りで(と言っても2chダイレクトではなくProToolsを使いマルチトラック録音であるが)作ってしまおうという企画なのだ。

場所は「ひこね市文化プラザ」内にあるエコーホール。さすが譜代大名筆頭格、多くの大老を輩出した井伊家彦根藩、ひこにゃんだけでなく素敵なホールもお持ちである。

今回の遠征は隊長倉中、指揮者増本、録音家石神、計3名のチームで臨む。現地へは安全第一の前日移動で、午後の日差しを受けた新幹線に乗ること2時間と少し。太陽が地平線に引きずり込まれる寸前、米原駅に到着した。

駅にはサニサイの隆平くんが出迎えに来てくれていた。チームは彼の車に乗り込み、下見をするためエコーホールへ直行する。ライトアップにより浮かび上がる彦根城、その城下石垣の間を抜け、ひたすら真っ直ぐな「ベルロード」を突き進む。晩秋の日暮れは慌ただしく、ホールまでのおよそ30分間で辺りはすっかり夜の帳が下りていた。

なかなか趣きのある雰囲気の職員さん(お名前は失念した)の案内でホールに入れてもらう。そこは狭すぎず広すぎず、今回のレコーディングには丁度いい広さと思われた。少し大きな声を出してみると、フワッと音が広がり空間に溶け込んでゆく。パステルの「なめらかプリン」のような味わいだ。30~40分かけ明日の打合せは滞りなく完了した。

その後ホテルへ向かいチェックインを済ませ、本日のメインイベント、この企画のプロデューサーである夏原さんとの顔合わせ&ディナータイム。引っ込み思案の私はこの手のイベントが大のニガテなのだが、夏原さんのさり気ない心配りと美味しい赤ワインのおかげか、いつしか緊張も解けていた。近江牛や赤蒟蒻など特産品を多く用いた料理に舌鼓を打ち、彦根の1日目は終わった。

翌朝は9時にホール入り。M-3で使うピアノの調律がすでに始まっていた。レコーディング順序はM-2「クラシックバージョン」からだが、調律はその前に済ませておくのだ。それと並行して私はマイクなどのセッティングに取り掛かった。

10時半には調律も終わり、4人の演奏者(フルート、バイオリン、ビオラ、チェロ)がステージに集まった。いよいよ音出しだ。

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セッティングは各楽器オンマイクで1本ずつ。フルート(ノイマンU87)、バイオリン(ノイマンKM84)、ビオラ(ノイマンKM84)、チェロ(ノイマンTLM170)。そしてメインマイクとなるAKG451をステレオペアで扇型の中心に据えた。

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ホールの響きを拾うオフマイクは、1階にAudio-technica4050、2階にRODE-NT2をそれぞれ2本ずつ、上の写真の青で印した辺りに立てた。印は写真右側にしかつけていないが、左側にも同位置に立ててある。

隊長と指揮者の的確な指示の下、リハーサルは快調に進む。マイクを通しスピーカーから流れ出る音は、期待以上にホールの空気をよく捉えていた。その響きに録音家は満足し、ホッとする。

準備万端整った。リハーサルの演奏もピークを迎えつつある。レコーディングは水物だ。回数を重ねれば良いテイクが録れるとは限らない。人はすぐに飽きる。私はそろそろ録り始めるべきだと感じ、隊長にそれを告げた。

しかし思わぬ事態が発覚し、レコーディングは中断される。

つづく。


ひこにゃん/ぬいぐるみ Mサイズ