月別アーカイブ: 2013年7月

The Travellers with Naoyuki Fujii レコーディングレポート~1日目(2)

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スタジオというのは防音工事がなされ、空調も静音設計であるため、人がいないときは雪の降り積もった朝のような静寂に包まれている。音が外に漏れないということは、外の音も入ってこないということ。誰もいないスタジオ。マイクと機材の用意は整い、メンバー到着を待つ静かなひととき。

午前11時、誰も時間に遅れることなく無事集合。

尚之さんとはときどき顔を合わせているが、トラベラーズの方々とは昨年4月に行われた渋谷AXでのライブ以来。久留米レコーディングからは2年、それなりに月日は流れているのに、あまり久しぶりな感じがしないのは、歳のせいだろうか。

再会の挨拶もそこそこに、みな準備に取り掛かる。
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ベースの武田兄さんが狭い持ち場でガタゴトと苦心しながらセッティングしている奥で、サックスの武田弟さんは準備万端、涼しい顔だ。写真にいない尚之さんはとっくに整い、一服つけに外へ出ているところか。

このスタジオは禁煙。ここが特別ではなく、いま都内のスタジオはほとんどが禁煙だろう。私が働き始めた頃はスタジオにタバコは付き物で、煙で白く霞む中仕事をしていたのに、知らぬ間に時代は変わった。昔吸っていた人が次々とやめ、若者はもともと吸わない人も多いので、スタジオ関係者の喫煙率は大幅に下がっている(世の中全体もそうだろう)。しかし「トラベラーズと尚ちゃん」は安定の喫煙率80%。

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この部屋でこれだけの楽器を同時に録音するのは初めての試み。ホントに5人が入ってちゃんと演奏できる環境なのか、今日まで半信半疑だった。こうして全員のセッティングができたところを眺めると、なんだかいい具合に収まっている。

さていよいよセッションが始まった。オイリーズカフェほど楽器間の距離がとれないので、かぶり具合が心配だったが、ほどよい感じで混ざっているようだ。

1曲目は「220V

ベースのリフから始まる、いかにも「トラベラーズと尚ちゃん」っぽい(個人的な感想)軽快なインスト曲。まだ確定していないが、アルバム冒頭を飾ることになるだろう。

前回同様、このレコーディングはできる限り一発録りを目指す。ダビングは考えない。

前回は出張ということで、機材にも時間にも制約があったりして、ダビング作業というのは極力避けなければならない事情があった。ただ今回はスタジオでの録音。スケジュールも余裕を持って組んであり、いろいろやろうと思えばできなくはない。たとえばパーカッションを加えたり、ギターをもう一本重ねたり、サックスの和声を増やしたり。

ただ音を重ねれば楽曲が良くなるか、というと、そうとは限らない。すべてを否定するつもりは毛頭ないが、巷にあふれる音楽が無駄な音のためにどれだけ窮屈な思いをしていることだろう。ひとつ音を足せば、そのぶんもともとあった音の存在が少しぼやける。足し算は誰でもすぐ思いつくけれど、引き算は忘れがちだ。

トラベラーズは「足さない美学」を貫いている(もちろん足すこともあるが)。

テスト録音〜プレイバック〜セッティング微調整、というのを2度繰り返して迎えた本番(のつもり)1発目。

素晴らしいテイクが録れた。「お疲れさま」と言いたいところだ。しかし始まったばかりで手応えがなかったのか、メンバーはもっと演奏したいような雰囲気を醸し出している。そこであと2回テイクを重ねた。

しかし1テイク目を超えることはなかった。まあこれはよくあること。

ここまでで、まだ2時間ほどしか経っていない。初日は試行錯誤もあるだろうから「1曲録れればいいね」なんて話していたのだが、事前の準備がよかったのと日頃の行いのおかげでスンナリとコトが運ぶ。

解散するにはまだ陽が高い。調子に乗り2曲目へ突入する。

つづく。


カシムラ 海外用薄型変圧器 220V~240V 40W TI-96

The Travellers with Naoyuki Fujii レコーディングレポート~1日目(1)

2013年7月15日、ニューアルバムレコーディング初日。

前作「Rubber Town」はトラベラーズのホーム久留米オイリーズカフェでのレコーディングで、私にとっては完全アウェイであった。今回はその立場がひっくり返り、都内某所で行われる。「実家」だった一口坂スタジオ消滅後、現ホームグラウンドといえるスタジオがその舞台だ。サッカーJリーグ発足20年、ホーム&アウェイ方式は日本社会に根付いたとみえる。

そのスタジオ内部を紹介しておく。
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まずは広々としたコントロールルーム。こんな居住性を持つスタジオは都内にそう多くはないだろう。中年オヤジが大勢詰めかけても息苦しくならない。これはとても重要なことだ。

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つづいてコントロールルームの3/5くらいの広さがあるブース。1976年製スタンウェイが鎮座している。グランドピアノがあるというだけでスタジオに風格が備わる。トラベラーズでは出番がないのだが、、、。

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最後にコントロールルームとブースとの間に位置する3畳ほどの部屋。ブースとして使えなくもないけどなるべく使いたくない、通路というか倉庫というか、中二階(階段があるわけではないが)のようなスペース。中二階のニュアンスをぜひともわかっていただきたい。(写真は藤井兄さんの唄を録った時のもの)

といった感じなので、普通のレコーディングの場合、リズム録り(ドラム、ベース、ギター、鍵盤楽器など、だいたい4~5人で同時に行う演奏)はムリである。

しかしトラベラーズは普通ではない(もちろんいい意味で、だ)。

一般的なマルチトラックレコーディングは、各楽器の音をなるべく独立させ、他の音が混ざらない(かぶらない)ようにして別々のトラックに録音していく。それは後に修正、調整をしやすくするためだ。作業効率を考えれば悪くないやり方だが、この世の中、効率を追うばかりに失ったものは数知れない。

もちろんトラベラーズもマルチトラックレコーディングを行う。しかし彼らの場合、各々の音を孤立させてはならない。生音を同じ空間で響かせ合わなければバンドの良さが損なわれてしまう。電気信号で混ぜるのではなく空気でミックスするのだ。音をどの程度かぶらせるのか、そのサジ加減が重要なのである。

その昔、ある著名なエンジニア(当時はミキサー、またはミクサーと呼ばれていたか)が残した名言がある。

空気は最高のミキサーである

どんなスゴ腕エンジニアも自然には勝てないのである(真偽のほどは詮索しないでほしい)。

私の仕事はトラベラーズと尚之さんが作り出す空間を損なわないよう、目立たず地味にサポートすること。聴いている人にテクニカルな匂いを感じてほしくはないのだ。行き過ぎたテクノロジーが人を幸せにするとは限らない。

なんて無駄話が長くなったが、ともかく初日を迎えた。

つづく。


中二階 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

The Travellers with Naoyuki Fujii レコーディングレポート(序)

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久留米「オイリーズカフェ」でのセッションから生まれた名盤「Rubber Town」が世に出て2年、「トラベラーズと尚ちゃん」企画第2弾のレコーディングが密かに始まっている。

前回はトラベラーズの本拠地久留米へ乗り込んでのレコーディングだったが、今回は彼らに遠征してもらい都内のスタジオで行なっている。

スタジオだからといって録り方は前と何も変わらない。5人をひと部屋に集めての一発録りだ(ヘッドホンシステムがあるのにあえて使わず、生音だけで演奏している)。

前回久留米でのレコーディング模様をレポート()したところ、そこそこ褒めていただけたので、今回も調子に乗りユルユルと公開していくつもりである(あくまで、つもり、だ)。

フミヤさんが芸歴30周年ということは、そう忘れてはならない、我らが尚ちゃんも30周年なのだ。今作がステキな記念碑になるよう微力を尽くしていきたい。アルバムは9月に発売される予定。


RUBBER TOWN

)前回のレポートを読み返したいところだが、それはもうインターネット界の藻屑と化してしまい何処にも残っていない。バックアップを怠ると痛い目にあう。電脳世界はオソロシイ。

 

藤井フミヤ Newシングル「青春」7/10発売

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いよいよ明日、フミヤさんの新曲「青春」が発売される。芸歴30周年に合わせたのか、たまたまなのか知らないが、キリのいいことに30枚目のシングルだそうだ。

4曲入りの通常盤以外に3種の初回限定盤(DVD付)もある。合計4枚、それなりの金額だとしても、ファンの方々は黙って全部買ってくれるのだろう。

以前ここで話題にした「ファーストテイク」の曲は、今回のシングルに入っている。どれかわかるだろうか。


青春