月別アーカイブ: 2014年12月

尚ちゃんの生誕祭。

checkers

先日12月27日は藤井尚之さん50回目の誕生日。そのお祝いライブがきらびやかなゲストを迎え、豊洲PITで行われた。以下、ゲスト出演者とセットリストを記しておく。

[Naoyuki Fujii Welcome 50’s Party]
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M1 嗚呼、我が人生
M2 キスの嵐
M3 クロームメタリック
〜鈴木雅之さん、ワンダラーズ、アブラーズ登場〜
M4 め組のひと
M5 ランナウェイ
〜鈴木雅之さん、アブラーズ退場。トラベラーズ登場〜
M6 Charlie Brown
M7 Yakety Yak
〜ワンダラーズ退場。河口恭吾さん登場〜
M8 テネシーワルツ
M9 I’ve Got You Under My Sin〜君に首ったけ
〜河口恭吾さん退場〜
M10 切れた首飾り
〜YOUさん登場〜
M11 Blue Velvet
〜全員退場。舞台転換のため小休止〜
〜Non Chords登場〜
M12 BARINBASS
M13 Space cake
M14 Naturally
〜Non Chords退場。夏木マリさん登場〜
M15 スワサントンブルース
M16 Player
〜夏木マリさん退場。アブラーズ再登場〜
M17 Final Lap
〜藤井フミヤさん登場〜
M18 ONE NIGHT GIGOLO
M19 I Love You, SAYONARA
M20 NANA
〜アンコール〜
EC1 N.
EC2 BLUE SKY
EC3 蜂蜜の蜘蛛の巣
EC4 君が好きだよ
EC5 聖者の行進
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どのコーナーも密度が濃く楽しいステージであった。そしてクライマックスはやはり本編最後、フミヤさんが登場したところであろう。アブラーズ+藤井フミヤ、元チェッカーズの4人が同じ舞台に立ち並ぶ姿は、そうそうお目にかかれるものではない。勝手ながら私はこの4人を「チェッカーズ SUPER 4(長いので以下CS4と略す)」と呼ぶことにした(某アイドルグループの真似をしたわけではない)。

CS4が今回演った3曲は、フミヤさんのライブでもよく歌われる曲だ。その時どきで調子の良し悪しはあれど、歌い回しやニュアンスは安定していて、ステージによっての違いは殆どない。しかし、この日は違っていた(と私は感じた)。

終演後、大勢でごった返す楽屋でフミヤさんに近づき、そのことを伝えてみると驚いた様子で「あ、そう?何が違った?」と聞き返された。ぼんやりとした感覚だけで何も準備していなかった私は、返答に窮しながらも思いつくまま言葉を並べたが、上手くは伝えられなかったように思う。どの言葉も口元から出た瞬間に何か違うな、と感じながら話していた。

いまもその違いを説明しようとしているが、やはり言葉にするのは難しい。簡単に言えば歌っていたのが「藤井フミヤ」ではなく「藤井郁弥」だったということか。フミヤさんの表情、目の輝きもちょっと違っていた気もする。もしまたCS4がステージに立つ日が来たら、その時、いい言葉が見つかるのかもしれない。

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今回のライブ、これだけの強力なゲストに囲まれ「尚ちゃん大丈夫か?」なんて余計な心配していたが杞憂だった(1曲目で歌詞が飛んだり、途中曲順を間違えたりしたのはご愛嬌)。何より歌がとてもいい。声の質感もよく説得力があり聴き手に歌詞が届くのだ。サックス奏者としてだけでなく、歌手としても円熟味を増してきたと思われる。

五十にして天命を知る。2015年の尚ちゃんは我々にどんな姿を見せてくれるのだろうか。個人的には久しぶりに歌手「藤井尚之」が詰まったアルバムの発表を希望している。

映画鑑賞「レスラー」

Wrestler

ミッキー・ローク主演「レスラー」を観た。ちょっと前にいろんな映画賞をとって話題になってたっけなぁ、なんてことをぼんやりと思っていたら、すでに6年も前のことだと気づき軽い衝撃を受けている(2008年9月の第65回ヴェネツィア国際映画祭で上映され金獅子賞受賞。同年12月全米公開。日本公開は2009年6月)。

特に映画好きではなくとも、80年代半ばから90年代にかけ思春期を迎えた者ならば、ミッキー・ロークの名に聞き覚えはあるだろう。「ランブル・フィッシュ(日本公開1984年)」「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン(同1986年)」「ナインハーフ(同1986年)」「エンゼル・ハート(同1987年)」など、物語の中身は記憶の彼方で霞んでいても、タイトルだけはすぐに思い浮かぶ。

あの時代、世の多くの女どもは彼に魅せられ狂気していた。それを見た男どもは、嫉妬心から彼を無視する者と、ちょっと危険な感じで翳のあるカッコイイ男に憧れ、咥えタバコで口元だけ微笑させるさまを真似る者と、かなり大雑把にいえばそのどちらかだった(異論は大いに認める)。

私はタバコを吸わないので幸いその真似はしないで済んだが、好意的な目で見ていた俳優ではあった。しかし何を血迷ったかプロボクサーに転向してしまい、その後の彼の活動には興味を失くしていた。この映画が騒がれた時も、醜態を晒しヨタヨタになった往年のスターを、いまさら見たいとは思わず目を向けることもなかった。しかしケーブルテレビの映画チャンネルで放映されていたのを、ついうっかり観てしまったのである。

素晴らしい映画だった。これは絵空事の話ではなく、俳優ミッキー・ローク再生のドキュメンタリー作品といえる。かつての人気プロレスラーだった「ランディ・“ザ・ラム”・ロビンソン」と人気俳優だった「ミッキー・ローク」、両者が見事なまでに融合している。

ボクシングなどやらなければよかったのに、当時もいまもそう思う。しかしそうした紆余曲折があったからこそこの役に巡りあったわけで、これもまた人生の必然だったのだろう。ボクサー時代の怪我と整形手術の影響から、往年の美男子の顔は悲しいほど崩れてしまった。そして充分に老いてもいる。それでも映画の中の彼はカッコよく、スターと呼ぶに相応しい輝きを放っていた。全盛期80年代の頃よりもずっと、私にはそう見えた。「いきざま」などという陳腐な言葉では表せない、ミッキー・ロークの濃縮された人生がこの作品には詰まっている。

さあ、当時日本全国にいたであろう村上里佳子(現RIKAKO)もどきたちよ。通称「猫パンチ」による1ラウンドKO劇があった1992年6月の両国国技館「ダリル・ミラー」戦を思い出せ。試合終了後リングサイドで受けたインタビューに、ウットリした目をしてこたえた里佳子の口真似で、彼女が放った言葉をいまこそ皆で大合唱すべき時だ。「ローク、サイコー!!」と。

スターにはいつまでもスターであることを求める大衆の悪意なき残酷さ。そしてその声に応えようとするスターの姿は痛ましくも美しい。「ラム・ジャム!ラム・ジャム!」と、ランディが繰り出す必殺技を待ち望む観客の連呼がいつまでも耳に残り、終幕で流れるブルース・スプリングスティーンの唄声が胸にしみる。