月別アーカイブ: 2013年9月

The Travellers with Naoyuki Fujii レコーディングレポート~補足(2)

メンバー紹介のつづき。

Guitar」,「Vocal」石原顕三郎(Kenzaburo Ishihara)
kenzaburo
久留米在住。他では聴けないアジのあるギターを弾く顕三郎さん。若い時分、年上のオネエサマに可愛がられただろうなと思わせるルックスとその性格。寡黙揃いのメンバーの中、スタジオでの発言は一番多く、ムードメーカーの役割も担っている(と思う)。少し潰れた感じのロックな声がミリョク的。アルバムでは尚之さんの声と、いい対比になっている。

guitar
ギターはAmpのみ、マイクは2本。[Shure SM57]、[AKG 414ULS]。HAは[Shep 31105]。

GretschのギターからMatchlessのアンプへ、ケーブル1本。間に余計なものは何も入っていない。逃げも隠れもしない一本道。カッコイイっすよ。

Tenor Saxophone」武田真治(Shinji Takeda)
shinji2
久留米在住。ベース武田圭治さんの実弟、真治さん。兄の圭治さんからの情報で元高校球児(久留米商)だったことが判明した。1983年夏に甲子園出場経験あり(1番ファーストだったそうだ)。戦績はなんとベスト4(準決勝で横浜商に12-2で敗れている)。1983年の夏といえば甲子園に大スターが登場した年だ。そうPL学園のKKコンビ、桑田真澄と清原和博である。もし横浜商に勝ち決勝へコマを進めていたら、そのPLと対戦できていたのに、、、。それを思うととても悔しい。今度真治さんに会ったとき、甲子園の話をたくさん聞きたいと楽しみにしている。真治さんを見る目は、私の中で確実に変わった。

Tenor Saxophone」,「Vocal」藤井尚之(Naoyuki Fujii)
Naoyuki
久留米出身、東京在住。今年、チェッカーズデビューから数えて30年。おお、いま気づいたが真治さんが甲子園に出た年とデビューが同じではないか。高校球児とチェッカーズ、意外な接点があった。

尚之さんとは思いがけず長くお付き合いしている。出会いはもちろんチェッカーズ。私が一口坂スタジオで見習い勤めをしていた1990年2月、「夜明けのブレス」のレコーディングが最初だ。チェッカーズのメンバーはみなやさしく、未熟な私の失敗にも大らかな態度で接してくれた。そのおかげで今日まで続けることができたといって過言ではない。素敵な方と知り合えたことは私の貴重な財産である。

sax57
ふたりともに[Shure SM57]。HAは[Mackie1642-VLZ Pro]。

ソフトな曲ではドラムのオーバーヘッドへのカブリ音が大きく、ミックスダウンで少し手間どったこともあった。ラストの曲「切れた首飾り」ではオンマイクをほとんど使っていない。

以上、私の拙いレポートはオシマイである。スタジオの空気がなんとなく伝わっただろうか。

ここまでのレポートは、録音技師として間近で仕事をしながら、私が見た出来事をありのまま綴ったものである。書かれた内容に嘘偽りはない。ただそれは私の目から見た話であり、私が知りえた事実だ。世の事象は万事画一ではなく、見る角度と情報量の違いで、関わった人の数だけ「真実」が存在する。神サマでもないかぎり、物事を客観的に見ることなんて出来るはずはない。真相は常に「藪の中」なのだ。

おわり。


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El Camino

The Travellers with Naoyuki Fujii レコーディングレポート~補足(1)

前回の「レコーディングレポート6日目」で、レコーディング全日程をひと通り振り返ったレポートは書き終えた。

辛抱強く読み続けてくださった方々から「マイク、機材のセッティングやメンバーのことをもっと知りたい」との声が聞こえた気がしたので、蛇足なのを重々承知の上、ちょっとばかり書かせていただく(私自身の備忘録としての意味もあるので)。

まずは配置図。ブース内の位置関係はこんな感じ。
map
中央の赤印はルームマイク。[Neumann KM84]をステレオペアで立ててある。これが部屋の空気を録るカナメ。このレコーディングにおいての最重要マイクだ。
km84

トラベラーズでは使われないスタンウェイのピアノ。スタジオから出すわけにもいかず、物置台と化しているのが悲しい。ピアノの上に乗っているタンノイのスピーカーはトークバック用(ヘッドホンをしていないメンバーとコミュニケーションを取るために必要なもの)。
piano

以下、各楽器のセッティングとメンバー紹介(私が紹介するまでもなく、みなさんは私以上に詳しいだろうが)。

Drums」ハリー吉田(Haruhiko Yoshida)
hally
ロサンゼルス在住のナゾ多き人物。国籍は日本なのだろうか。この写真は穏やかに写っているが、サングラスをかけると悪役な感じのコワい顔へと変貌する(アルバムジャケットやチラシをご覧になった方は納得していただけるだろう)。しかし物腰は丁寧で実直な人柄。そしてそのマジメさ故か、すこし打たれ弱い。Kディレクター大のお気に入り、レコーディング中はアイドル的存在であった。

drums
マイクは、バスドラム[AKG D112]、スネアドラム[Shure SM57]、オーバーヘッド[RCA77×2(ステレオペア)]。基本はこの4本で、曲によってはフロアタムに[Shure SM57]を追加している。HA(ヘッドアンプ)はすべて[Mackie1642-VLZ Pro]。

前回オイリーズカフェで録った時は、機材の都合上「同時に録れるのは16chまで」という制限があり、ドラムに使えるマイクは4本が限界だった。今回そんな縛りはないのだが、なんとなく4本で録りたいという気持ちがあって、こんな感じのセッティングになった。ポイントはRCA77を使ったことか。いい具合にやさしい響きで録れた。このマイクはサックスのオフマイクとしての役割もある(というか結果としてそうなってしまった)。

Upright Bass」武田圭治(Keiji Takeda)
keiji
久留米在住。トラベラーズの船長、まとめ役。チェッカーズオリジナルメンバーとして知られる。この人がいなければトラベラーズの活動は支障をきたすであろう。楽器と同じく、バンドの土台を支えている。ビシっと決めた髪でスキを見せない、寡黙でダンディーなオジサマだ。久留米にある「おゝ竹」と深い繋がりのある人物だと聞く。
IMG_0008_2
久留米レコーディングのとき、一度だけ行く機会があった。何を食ってもうまい。

bass
Amp[AKG D112]、LINE[AVALON U5(DI)]。HAは両方とも[Shep 31105]を使用。ベースの生音も録りたいところだが、実音より他楽器のカブリのほうが大きいので断念。

前回レポートで触れたが、レコーディング最終日にアンプがトラブり、急遽PETERSONのアンプで代用した。したがって「El Camino」だけ他曲とアンプが違う。

思いのほか長くなりそうなので、2回に分けることにする。

つづく。


El Camino

号外〜アルバム発売〜The Travellers with Naoyuki Fujii「El Camino」

sale

長らくレポートで煽ってきたアルバムが本日ついに発売。

お買い上げくださった方々、聴いてみてこれはいいアルバムだと思ったら(思うハズだ)、誰憚らず2枚目、3枚目を買い求め、友人知人へのささやかなプレゼントとするのがよいだろう。その1枚1枚が「トラベラーズと尚ちゃん企画」第3弾へとつながる(脅しているわけではない)。

harry
ハリーさんも海の向こうで、そんな気持ちでいることだろう(顔はコワいが脅しているわけではない)。

ときに軽く、ときにじっくり、いろんな場所で何度も味わってもらえたら、作り手のひとりとしてシアワセなことこの上ない。


El Camino

The Travellers with Naoyuki Fujii レコーディングレポート~6日目

7月23日。レコーディング6日目(最終日)。

このレコーディングの間、初日を除き過ごしやすい陽気が続いていたが、今日は一転して朝から蒸し暑い。メンバーは21日名古屋、22日渋谷と連日のライブを乗り越えここへ帰ってきた。オジサンたち、暑い中でもガンバルのだ。
retake
昨夜「El Camino」を録り直したいとの知らせを受けていた。そう、思い起こせばこれは初日の3曲目、体力が尽き、後日チェックで、、、と保留したまま終わっていた。ライブの合間にメンバーがチェックを行ない、もうワントライしよう、という話になったようだ。アルバム表題曲でもあるし、中途半端では終われない。

よし、じゃあとっとと始めよう。昨日のライブの勢いを借りサクッと録ろうとしたところ、圭治さんの様子がおかしい。ベースアンプの調子が悪いようだ。日頃の行いのよい我々が珍しくアクシデントに見舞われた。

ボッボッボッ、、、アンプからはドンカマのように一定間隔で発するノイズしか出てこない。これは「リテイクまかりならぬ」との神からのお告げか、、、そんな思いがよぎる。

電源のオンオフ、ケーブルの抜き差しなど、何をやっても変わらず全くダメ。すぐに直せる感じでもない(いまここにいるのは機材メンテナンスに暗い者ばかりだ)。途方に暮れかかったところで、何年も地下倉庫に眠っているアンプの存在を思い出した。
peterson
ずっと忘れられていたにもかかわらず、ヘソを曲げず素直に音を出してくれた。健康そうでなによりだ。これまでと音の傾向はちょっと違うがゼイタクは言っていられない。

ベースアンプの具合を確かめつつ録り始め、リテイクは全部で5回、最後のテイク5がOK。これで思い残すことはないだろう。初日よりもタイトでスピード感のあるテイクに仕上がった。

この日のレコーディング風景もFacebookに動画がアップされている。OKテイクとは別のアウトテイク(たしかテイク2だったか)が聴けるので、マニアな人は要チェックだ。

El Camino」が無事終わったところで、顕三郎さんから最後のお願いが。「切れた首飾り」のVocalをもう一度唄ってみたいという。

一同「ええっ!なんで??いま録れてるやつ、すごくいいじゃん!!」の声。面倒だからゴマかそうとか、お世辞で言っているわけではなく、ホントにいい唄が録れているのだ。それでも顕三郎さんは「お願いだから一回だけ唄わせてほしい」と怯まない。

唄ってみた結果は、、、連日のライブでノドがガラガラ、残念ながら曲に合う声ではなかった。顕三郎さんもすぐ自覚して納得。

終わったらすぐバラシ(後片付け)。
barashi
「立つ鳥跡を濁さず」バラシも早い。
kaeri
彼らは街から街へさすらうトラベラーズ。慌ただしく明日へと旅立っていく。次はいつ、どこの街で逢えるのだろうか、、、。

6日間に及ぶレコーディングは、無事これで完了した。

ここでレポートも終わりたいところだが、ちょっと書き残したことがあるので、もうすこしお付き合い願いたい。

つづく。


El Camino

The Travellers with Naoyuki Fujii レコーディングレポート~5日目

7月20日。レコーディング5日目。

旗日「海の日」から始まった怒涛の一週間もついに今日で終わり。ラストを飾るのはアルバムでも最後の曲である「切れた首飾り」。

Vocal石原顕三郎、作曲藤井尚之で、作詞はその兄サマ。本日のゲストである兄サマは夕方お越しになる予定。歌詞の譜割りなど、何か問題があった場合に備え立ち会ってくださる(唄い回しの具合によって、その場で二言三言歌詞が変更になることもある)。
fuwari
歌詞は事前に届いていた。オケを録る前、譜割りチェックで唄う顕三郎さんとその仲間たち(その様子がFacebookにアップされている)。

歌詞は完璧。さすが兄サマいい仕事をなさる。まずはカラオケ、最後も軽やかにパパッと録って、、、とはいかず、これは難産であった。

2テイク録ってプレイバック、そしてまた2テイク、、、それを繰り返しここまで6テイク。長く暗いトンネルに迷い込んでしまったようだ。どちらへ向かえば出口があるのか、見当さえつかない。

スタジオはドンヨリとした空気に包まれている。口数も減ってきた(もともと多くもないが)。そこにひとすじの風が吹く。

「軽く唄いながら録ってみようか」

普段、聴いているようで聴いていない、聴いていないようで聴いている(どちらかというとホメコトバのつもりなので怒らないでほしい)Kディレクターが、みなにポツリと投げかけた。そのひとことが我々の進むべき道を示す小さな灯りとなる。

ビートが曲をリードする「Mojito」,「No.5」では、唄はカラオケにただ乗っかればよく、アトヅケでもなんら問題はなかった(もちろん同録するに越したことはないが)。しかしそれとは異なり、この曲の核となるリズムは唄の息づかい、呼吸がつくり出す。息を止めたままで、生き生きとした演奏など望むべくもないのだ。
breathe
けれども差し替えることが明らかな仮唄を、他楽器のマイクにカブリありの状態で録る、というのは決して喜ばしいカタチではない。しかもドラムはブラシで音量が小さく、他も総じてソフトな演奏の中で、だ。しかし他に手はない。このままカラオケで録り続けても埒が明かないだろう。

そんなこんなで軽く唄いながら録ったテイク7。暗いトンネルの向こう、かすかな光が見えた。そして続けたテイク8。シンバルの余韻が消えた先に出口が現れる。

これまでとは雲泥の差のテイク7と8。どちらも100点ではなく少しのミスはあったが、両テイクのイイトコどりでOKテイクが完成した。

guest
我々が暗いトンネルの中でかすかな光を見た頃、兄サマは登場していた。

ひと部屋に全員が入り、小声で唄う仮唄まで同録しているのを見た兄サマは「すごい録りかたしてるね。プレスリーの頃みたい」と驚き、笑っていた。現代のスタジオ録音から見ればちょっと変わったレコーディング風景。しかしこれが時代を越えた旅人、トラベラーズのスタンダードなのだ。

そしてVocalダビング。

はじめ、顕三郎さんはちょっと力が入りすぎていた。特に唄い出しはギコチなく、その悪い流れを曲終わりまで引きずってしまっていた。そこで兄サマが口を開く。

「頭のAメロ2行はカギカッコ(話し言葉)なんだよ。もっとやさしく語りかけるように」

兄サマからのアドバイスで顕三郎さんは何かをつかんだのか、次に録ったテイクはエクセレント。その後もう1回録り、この2つのテイクでステキなVocalトラックが誕生した(心配した仮歌のカブリは気にならず)。

これで全13曲完了。ダビングの録りこぼしもなく完璧な仕事運び。

最後に全曲聴いてチェックするはずだったが、今日の闘いに疲れ、その気力を残しているものは誰もいなかった。チェックは翌週の23日(予備日)へと持ち越すことに。なにも慌てることはない。

ということでレコーディングはまだ終わらず。

6日目へつづく。

追伸___
もし「トラベラーズ尚ちゃん企画」の第3弾があるならば、その時は歌詞だけでなく、兄サマにも演奏に参加してもらいたいものである。実は今回も1曲ブルースハープを吹いてもらおう、なんて話もあったのだが流れてしまった。表記は「トラベラーズと尚ちゃん、feat.兄」となるのか「トラベラーズとF-Blood」となるのか___


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The Travellers with Naoyuki Fujii レコーディングレポート~4日目(2)

2曲目「Bunkagai Blues

久留米には「文化街」という盛り場があるそうだ。馴染みある方々がこの曲を聴けば、それぞれに何か思い浮かぶ絵があることだろう。行ったことのない私は、架空の「文化街」を思い描きながら聴いていた。

唄は尚之さん。全部で7つある唄曲で、尚之さんVocalはこれと「Sepia Color」の2曲だけ。尚之さんファンからは「尚ちゃんの唄が少ない!」なんて不満の声が出てくるかもしれない。

前作「RUBBER TOWN」は「尚ちゃんとトラベラーズ」。「トラベラーズ」をバックに従えた格好で「藤井尚之」が主役だった。なのでボーナストラック扱いの「黒い雨」以外、すべて尚之さんがメインVocalだ(これも2コーラス目は尚之さんがメイン)。

しかし今回は「トラベラーズと尚ちゃん」。立場が逆になり「トラベラーズ」が主役、「藤井尚之」はゲストとなる。ただ前作ほど主客の区別は感じられない。成熟したひとつの「バンド」としてみてもらったほうがいいだろう。
cyunikai
この曲「Bunkagai Blues」で尚之さんはサックスを吹かず、手ぶらで唄うだけ。ならば「中二階」ブースの出番か。ついに禁断の扉を開ける時がきた。

じゃあとりあえず中二階で、という、ちょっとお試しな気持ちで始め、ポンポンポンと3回録る。最後のテイク3が素晴らしく、中二階ブースの是非、その判断もつかぬまま勢いでOKとなってしまった。結局のところ、中二階を使ったのはこの曲だけになったので、それならすべて同じ部屋でやればよかったかと、いまだ煩悶している。

そして前曲につづき、またもやダビングあり。今回唯一のコーラスを、サックスソロ前のちょっとアヤシゲなパートに入れた。コーラスは武田兄弟と顕三郎さんの3人でやっている(ほとんど顕三郎さんの声しか聴こえないが、、、)。

躊躇うことなく3曲目へ。4日目続けば、もはや習慣となる。
kashi
3曲目「No.5

顕三郎さんの唄曲。これも「Mojito」と同じやり方で、まずカラオケ録り。この曲が始まる前、尚之さんがサックスの立ち位置を逆にしたいと言ってきた(理由は聞きそびれたので不明)。
sax_position1
上がこの曲の前まで。下がこの曲以降。何か思うところがあったのだろう。
sax_position2
なかなかこれだ、っていうテイクが出ないまま、すでに5回。順調だったとはいえ3曲目、さすがに疲れが見え始めた。引き際の見極めを誤ると泥沼にハマりこむ。これはレコーディングに限った話ではなく、世の習い、数多の歴史が証明している。

もうピークは過ぎたと判断、編集でまとめることにした。テイク4の2コーラス目、テイク5の1コーラス目がよかったのでそれを合体させる。ドンカマ)を使っているわけでもないのに、テンポの乱れもなく、つながりはとても自然だ。

そしてVocalダビング。通しで3回唄い、30分もかからずに終了。

これで本日はお開き、かと思われたところで「Mojito」を唄い直したい、という顕三郎さんの声。「No.5」を唄ってみて力の入れ具合、というか抜き加減に思うところがあったという。

急遽「Mojito」の唄リテイク。2テイク録り、テイク2がほぼOK。一昨日よりもだいぶ力が抜け(特にサビ)、ソフトで深みのある唄になった。

本日もつつがなく3曲完了。明日はいよいよ最終日(の予定)。大物ゲストも登場する。

5日目へつづく。

)テンポのガイドとなるもの。「ドン」を省略して「カマ」と言われることも。一般的に、リムショットやカウベルなどの音を4分音符で「カ、カ、カ、カ」と鳴らし、それを聴きながら演奏する。最近は「クリック」と呼ぶことが多く「ドンカマ」はいずれ死語になるのだろう。


KORG コルグ アナログシンセサイザー モノトライブ monotribe


El Camino

The Travellers with Naoyuki Fujii レコーディングレポート~4日目(1)

7月19日、レコーディング4日目。

注意深い人は、おや?日付間違っているのでは、と思ったことだろう。7月15日(月)から始まったレコーディング、本来なら4日目は18日のはずだが。

昨日は安息日。天地創造において神は7日目に休まれたが、我々は4日目に休んでしまった。煮詰まる前にリフレッシュ、「転ばぬ先の杖」といったところ。

勢いにまかせて一気に進めてしまうのもいいが、それは向こう見ずなワカモノが持つ特権だ。百戦錬磨、ベテラン揃いのメンバーはそんな無茶をしない(無茶できないわけではない。やらなきゃいけないときはもちろんやる)。
no5
1曲目「まじわらない二人

なにやら不思議なタイトルのインスト曲から。インストはこれが最後、残り3曲はみな唄ものだ。

なかなかよかったテイク2(秘蔵メモでマル印)、そのプレイバックが終わったところで尚之さんは「間奏のブレイクのとこ、これ(手拍子の仕草をする)入れたいよね」と言った。そこにみんなでハンドクラップを入れたいというリクエスト。

この間奏というのは頭のサックスのテーマが終わったあとのパート。ブレイクしてドラムだけになり、そこにギター〜真治さんサックス〜尚之さんサックス〜ベースという順番で楽器が復帰していく。

同録をモットーとするこの現場、簡単にはダビングを認めない。ブレイクするってことは手の空く人がいる、それならば同時にできるんじゃないか、とプレッシャーをかけるKディレクター。あまり気がすすまぬ様子のメンバーだったが、やってみる前からムリなんてことは言わないナイスガイ揃い。ともかく一度チャレンジだ。

ハンドクラップ同録のテイク3。終わったあとメンバーからは、同時はちょっと厳しいとの声(それは聴いているこちら側も感じていた)。全体のデキもそこに気を取られたからか、集中力の欠けたイマイチなテイクだった。

これは無理、議論の余地なしでハンドクラップはダビングとなった。

同録できないってことは、さっきのテイク2、あれOKでいいんじゃない?との声が上がる。しかしストイックなメンバーにそれは聞こえなかったのか(あるいは聞こえないふりか)、飯場から出て行く土木作業員の風情で持ち場へ戻り、4回目へ臨んだ。

結果はお察しの通り、テイク2を超えることはできなかった。
clap
そしてハンドクラップ。このダビング風景の動画がFacebookにアップされていたので、観た人もいるのではないだろうか(未見の方はぜひ)。ブレイクから楽器が増えていくのに連動して、ハンドクラップも盛り上がっていく。メンバーの楽しそうな姿がいい。

つづく。


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